- ママナース向け子育て支援制度ってどんなのがあるの?制度は両立に役立つ?
- 使える子育て支援制度があるなら、すべて使いたい!
ママナースが知っておくべき子育て支援制度は、休暇制度や給付制度など多数あり、使えば看護師と子育ての両立に大いに役立ちます。
今回は、出産前からから未就学児を育てるママナースまでが使える子育て支援制度を
くまなくお伝えします
本記事を読めば、網羅的に子育て支援制度を確認でき、看護師と子育てを両立に大いに役立ちますよ。
看護師と子育ての両立には育児支援制度の理解が必須
子育て支援制度はママたちが使える権利。
産前産後休暇・子の看護休暇・夜勤免除など様々な制度があるのですが、労働者であるママナース自身が制度について知っておく必要があります。
進まない育児支援制度の利用
出典:厚生労働省
子育て世代の看護職員の退職は、国が子育て支援制度を打ち出していても、なかなか止まりません。制度を使えていないのでしょう。
身近な職場環境を見ても、看護師がみんな子育てしやすい環境になっているとは、なかなか実感できないな。
看護師人口(保健師・助産師含む)は年々増え続け、2020年には173.4万人になりました。調査を開始した1990年には83.4万人でしたから、看護師人口は90万人増えたことになります。
それなのに。
子育て支援制度がどこの職場でも使えていて、看護師と家庭が両立しやすいものだったら辞めませんよね。
国が作った子育て支援制度を事業所が使えていないか、労働者が「知っていても使いたいと言い出せない」のかなと考えます。
労働者である看護師の方が子育て支援制度を理解しておく
子育て支援制度と使うなら、労働者(看護師)が制度をきちんと理解していないといけません。
いまでも職場の上司から「時短は使わせない」「夜勤免除は無理」などといわれる看護師の話を実際にきくんですよね。
師長から強く言われると、引くしかないのかと思っちゃう……
労働者のナースに知識があれば
「権利として子育て支援制度を使えるはずなんだから、使わせないのはおかしいのでは?」と疑問を抱けるはずです。
働く看護師に知識があれば、労務局に相談することだってできるんですよ。
妊娠中ママナース向け支援制度
看護師は立ち仕事で重労働。妊娠中の負担も大きいものですよね。自分を守るためにも妊婦にかかわる労働の決まりを知っておきましょう。
妊婦の体を看護師の労働から守るもの
- 妊婦の時間外労働・休日・深夜労働(22時~5時)の禁止
- 妊婦の危険な作業への制限
- 妊婦に対する変形労働時間の制限
- 軽作業への転換を推奨
法律の根拠:労働基準法64条・65条、母性保護措置
妊婦は全身で赤ちゃんを育てるのですから、疲労を起こすような働きかたはNG。
長時間労働や深夜労働は避けたほうがよいのです。
長時間労働や深夜労働は避けたほうがよいのです。
立ち仕事・ハードワークによる疲労で切迫になった同僚ママナースもいましたね。
よく「6か月までなら妊婦にも病棟で夜勤をさせる」などの病院をききますが……
看護師の職場でいう危険な作業とは、放射線の被ばくリスクがあるレントゲン室に入っての検査介助や、外来化学療法のミキシングなどがありますよね。
また、病棟では成人患者さんのトランスも腹圧がかかるため、妊婦のママナースには危険です。周囲のスタッフが「妊婦さんはトランスの時は声かけてね!」 といって代わってくれるものです。
妊婦自身も重労働と思われるものは、他のスタッフに手を借りるようにしましょう。
法律で記されている権利ですからね。
産前産後休暇制度
妊婦さんには産前産後休暇があります。
- 産前6週……妊婦からの請求があったとき(多胎妊娠の時は産前14週から)
- 産後8週……すべての妊婦を就業させてはならない
わたしは大昔の先輩ナースから「私は臨月の生まれる1週間前まで働いたわ」と武勇伝を語られたこともありましたが……
「いや、請求してちゃんと休もうよ」と思います。自分の体のため、赤ちゃんのためです。
看護業界ってなぜ無理した人が偉いみたいになるんでしょうね……。
産後8週は妊婦から請求しなくても、就労はさせてはならないとなっています。
が、産後6週を経過して医師が大丈夫と判断し、ママナースが「働けます!」と申し出た時には働けるそうです。
でも、産後に無理をすると後で体調を崩すことがあります。
産後のママナースを助ける支援制度
出産後のママナースむけ支援制度を紹介します。
育児休暇制度
産後のママナースは育児休暇を取得する権利があります。原則1歳未満の子どもを養育するための休暇制度です。
期間 | 産休取得後、子どもが満1歳になるまで | 両親ともに育休を取得する場合、1歳2か月まで延長可 能。また、保育園に入れないなどの理由があれば、申し出により最長2歳まで取得可能 |
取得できる人 | 常勤・パート・派遣看護師 | 入職して1年以上たっており、育児休業あけにも勤務をする予定がある人。 パートや派遣の場合、週の所定労働日数が3日以上。 |
法律の根拠:育児看護休業法第二条
1歳未満の子どもを育てるのは、ママも体力的に大変です。夜泣きもありますし、まとめて眠ってくれる保障はありません。
自分の子育てを振り返っても、子どもが乳児の時にまとめて眠った記憶がないですね…。
育休は平成17年からパート・時短勤務でも育児休暇が取得可能になりました。ただし取得には条件があります。
- 入職後1年以上経過していること
- 週の労働日数が3日以上であること
- 子どもが1歳を過ぎても育休明けに引き続き雇ってもらえること
つまり時短勤務のパートも、週に3回以上勤務していれば育休が取れるってことね!
そのとおり。
なお、病院独自の育休制度として「3歳まで育休取得可能」としている法人もあります。転職先を探すときに育休期間を確認しておくのもいいですね。
育児時短制度・夜勤免除
- 育児のための時間外労働を制限
- 未就学児を育児中の深夜就業の制限
法律の根拠:育児介護休業法
小学校就学前の子どもを育てているママナースが請求した場合、
1か月 24 時間・1 年 150 時間を超える時間外労働は制限してもらえます。
また、同様に請求すれば深夜時間外労働の免除も可能(夜間子どもを養育できる大人がいる場合は別)。
夜勤の免除って子どもが何歳まで申請できるの?
フレックスタイムの導入もすすめられていますが、看護師の仕事では患者さん・利用者さんなど相手のあることですし業務上時間で行うことも多いですよね。フレックスタイムは現実的ではないようです。
子の看護休暇
- 子どもが病気の時、ケガをした時・健康診断・予防接種の時に取得できる休暇
- 多くの事業所では無給だが、欠勤扱いにならないのがメリット
- 休暇日数は年に5日。(子どもが二人以上の時は年10日まで)
法律の根拠:育児看護休業法
子どもが未就学児の間は1歳・2歳・3歳児健診など定期的に乳児・幼児健診があります。
保健所で実施される健診は平日に行われるため、健診で休暇が取れるのは助かりますね。
病欠の時は子の看護休暇を使用でき、常勤だけでなくフルタイムの日勤契約者や1日4時間以下の短時間期むナースにも適応。
子の看護休暇について無給とするかどうかは事業所の就業規則によります。「欠勤で日給をひかれるよりはまし」と思うかどうかですね。
産休・育休など子育て支援制度の手続きについて
産休取得の手続き
産前は申し出があったときに出産予定日の前6週から休暇を取得でき、産後は8週は労働させてはならない決まりがあります。
妊婦であるママ―ス本人が、事業所に申し出て産休(産前産後休暇)取得を請求します。
請求する時期は産前であればとくに決まりはないのですが、産休に入る直前にバタバタと請求するよりも余裕をもって請求したほうがいいですね。
直属の上司・総務部に提出時期を相談しましょう。
書式についてですが、大きな事業所(たとえば100床以上の病院など)であれば決まったフォーマットが準備されているので総務部などに確認を。
事業所が小さい・きまった書式がない場合は勤務先に確認のうえ、フリー素材の書式を使ってもよいでしょう。
参考サイト:日本の人事
育児休業取得の手続き
育児休業はママ本人が勤務先に取得希望を申し出ます。が、夫婦で育休を取得する場合はパパも勤務先に届け出を提出します。
申請先 | 勤務先 |
必要書類 | 育児休業申出書(事業所内で決まった書式) |
時期申し込み時期 | 育児休業開始予定日の1ヶ月前まで |
申し込みは育休に入る1か月前までとなっていますが、産後も働く予定があるならば、妊娠がわかったときに上司には育休取得予定と告げておきましょう。
育休が取得できる時期は産後8週を経過後から1歳まで。保育園に入園できない場合は2歳まで延長できます。両親ともに育休を取得する場合は1歳二か月まで延長が可能です。
夜勤免除の手続き
夜間勤務とは夜22時から朝5時までの勤務です。
申請先 | 勤務先 |
申請時期 | 勤務開始の1か月前まで。6か月適用されるため、延長希望があれば再度申請。 |
申請条件 | 未就学児を育てるママ。ただし、夜間に子どもを保育できる他の大人が同居している場合は除外。 |
とはいっても、夜勤者の確保って勤務表を作る師長からしたら切実な問題。1か月前の申請では難しいかなと思います。
現実には産休に入る前から「育休明けには夜勤免除を申請するつもりです」と話しておいた方がいいですね。
事業所からすれば、夜勤者の確保は切実な問題。中には次のようなことを言う師長さんもいます。
人がいないのだから夜勤をしないのなら常勤はやめてもらうわよ
労働者の権利を奪うのはある意味違法行為ですが、理解の進まない職場はまだまだあるんですよね……。
就職先を探すときは、どんな子育て支援を実施しているのかを調べておくのもいいでしょう。
子の看護休暇の手続き
この看護休暇は子どもの発熱やけがなどの時に突発的に必要になるもの。
休みの取得時は口頭で直属の上司に伝え、実際の休暇申請は後日行うケースもあるでしょう。
申請方法は事業所に確認しておくのが良いかと思います。事業所内で決まった書式があり、病棟など部署に置いてることが通例です。
予定のわかっている乳児検診・予防接種などは保健所からお知らせが届きますのでわかった時点で申請します。
妊娠出産・育児休業取得による不当扱いは禁止されている
妊娠出産・それにまつわる休暇を申し出た時に、事業主が不当な扱いをすることは禁じられています。
- 病棟で育児休業をとると言ったら、師長から希望していない「検査部門に移動してもらう」といわれた
- 時短勤務は産後半年で切り上げてフルタイムにしてくれないかといわれた
- 妊娠中でもぎりぎりまで夜勤免除は認めないといわれた
不当扱いは禁止されていると言われても、師長からは強く言われるんだよね。いづらくて……
出産育児に関する休業は法律で認められた労働者の権利です。
労働者の権利を無視することに罰則はありませんが……
労働者が相談をすれば労務局から不当扱いの改善と改善報告を義務付けられます。
報告をしなければ、事業所名を公表され、20万円の罰金を命ぜられることがあるのです。
看護師同士の横のつながりはつよいんですよね。
看護師を雑に扱ったことが公表されれば、ブラック病院であるうわさはすぐに広がるね
はい、求人を出したときに看護師は集まらなくなるでしょうね
また、患者さんを集める病院や利用者を集める施設は、地域の信用が命。
とはいっても、育休や子の看護休暇については理解してくれない病院もありますよね。
残念ですが無理に権利を主張して険悪になるくらいなら、移動や転職もやむなし、かもしれません。
ママナースを応援する出産・育児に関するお金のこと
出産育児を通して無給になるママナースは経済的な不安がありますよね。出産・育児を通して支払われる補助金についてお伝えします。
出産一時金
金額 | 令和5年以降、一児につき50万円 |
申請の条件 | 産科医療制度に加入している医療機関で、妊娠22週以降に出産した場合。 健康保険に1年以上加入している |
申請者 | 本人または家族 |
申請期間 | 出産翌日から2年以内 |
申請先 | 市区町村の年金課 |
出産一時金は、お産の費用を助けてくれるイメージですね
出産一時金は、健康保険に加入しているママが、妊娠22週以降出産した場合に受け取れる補助金です。
自分で健康保険に加入している場合は加入している健康保険組合から。パートナーの扶養に入っている場合は、パートナーの加入している健康保険組合から支払われます。
また、出産一時金には直接支払制度があります。
出産前にお産をする予定の医療機関で前もって手続きをしておけば、協会けんぽから直接医療機関に一出産時金を払ってくれる制度です。
出産手当金
産休中のママが仕事を休んで無給の場合、不足している収入を補ってくれる手当。
勤務先が加入している健康保険組合から支払われるため、自分で健康保険に加入していることが条件。
パートやアルバイト・派遣でも支払われますが、扶養の範囲で働く時短パートママには支払われません。
産前産後休業中の社会保険料の免除
産休中は勤務ができず、給料の支払いは基本的にありません。
無給の中で支払いが免除されるのは助かりますよね。お産の後ってお金がかかるもの……
病院によっては産休中に元の給料の何割かを支払うケースもありますが、
ほとんどの病院では支払わないと思っておいていいでしょう。
育児休業給付金
育児休業を取得中に受け取れる給付金です。
条件 | ・育休明けも働く予定 ・自分で社会保険に加入している(被扶養者はNG) ・育休に入る前2年間のうち、【月の賃金支払基礎日数が11日以上の日】が1年以上ある |
金額 | 元の給料によって異なる |
支給期間 | 産後8週以降~育休終了日 |
申請先 | 事業所(事業所がハローワークに申請してくれる) |
自分で健康保険に加入しているママに、年金事務所から支払われるのです。
金額はママナースのもともとの給料によって異なり、育休の初め半年は給料の67%、半年を過ぎてからは給料の50%が受け取れます
育休を分割でとった場合には給付金対象外になる期間がありますので、勤務先に確認しておきましょう。
育休は基本的に一歳までですが、保育園に入れず2歳まで延長した場合、給付金も2歳まで受け取れます。
子育てに理解のない職場なら移動願いもあり
子育て支援は妊娠中・産後の育児中も含めさまざまな支援があります。しかし、所属部署のママナース率が低く、休暇の利用に理解がなければ子育て支援制度があっても使えません。できれば同じ職場で長く働きたいもの。ですが、子育て支援制度の利用について難色を示す職場であれば移動したり、転職を考えてもよいかもしれませんね。
子育てを後悔しないために、支援制度を使って子どもとしっかりかかわれる時間も確保したいものです。
参考サイト・資料
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